どこにでもあるような俺だけの恋の話

恋バナ (赤)

恋バナ (赤)

1・カミングアウト

あの頃一番大切だった君、元気にしているだろうか?
もう、新しい彼と結婚したのだろうか?
看護婦の仕事はまだ続けているだろうか?
今年の6月で25歳になる君。君のことを何度も忘れようと思ったけど、どうしても忘れられないよ。俺はあの頃のまま、女々しい男のままだよ。
君にこっぴどくフられてからもう3年以上になるね。それが原因かわからないけど、俺は女の人が怖くて、信じられなくなっちゃったんだよね。女友達って呼べる人は何人かいるけど、それ以上の関係には怖くて踏み出せない。
でもそれを君のせいにしている俺はもっとサイテーだね。
君と離れてから、俺はアニメばっかり見るようになったよ。アニメに出てくる女の子は、あんなひどいメールよこさないからね・・・逃げてばっかりだよ、俺。やっぱサイテーだな。




君と出会ったのは、もう6年も前になるか。
同じバイトの先輩と後輩。よくあるカップルだったね。
俺はそのとき20歳。「彼女が欲しい」とがっついた時期も終って、友達と一日中格ゲーやってるのが一番楽しかった頃だよ。
大学生だった俺は、毎日遊び放題で、金も車も、甲斐性もなかったけど、そんな俺を君は好きだって言ってくれたよね。あのメール、携帯変わっちゃったからもう残ってないけど、メールに保護かけて、大事に大事にとっておいたよ。




いつだったかな、6年前の3月くらいだったかな?バイトで休憩が一緒になったときにメアドを聞いてきたよね。メアドを聞かれただけで浮かれちゃったなぁ。「もしかして俺に気があるのかな?」と思って遊びに誘った時、君は友達との約束を蹴ってまで俺についてきてくれたんだよね。後からその話を聞いたとき、俺、すげー感動しちゃったよ。
5月に実家に帰ったときも、俺だけにこっそりお土産を買ってきてくれたよね。あのお菓子、超うまかったよ。あんなにドキドキするお菓子は初めてだったよ。
夜の公園でお菓子を受け取って、家に帰ってタバコを吸ってた時にあのメールが届いたんだっけ。「俺みたいなつまんない男でよければよろしくお願いします」って返したんだよね。その夜、月並みだけど興奮して眠れなかったよ。




5月5日に付き合い始めたけど、俺たちが本当に分かり合えたのはもっと先だったね。俺はその頃大学のサークルの仕事が忙しくて、付き合い始めたばっかりの君をほっときっ放しだったよね。あれ、サークルの仕事が忙しかったのもあるけど、本当はどう付き合ったらいいかわかんなかったんだよ。だって俺、ヲタクだし。
リアルげんしけんみたいなサークルの仕事がひと段落して、イベントの打ち上げの二次会に向かう道で、酔っ払って君に電話をしたのは覚えてるかな?俺は覚えてないんだけど、必死に「放っておいてごめんね」と謝ってたんだっけ。それが俺たちの最初のステップになったんだっけね。




イベントが終ってひと段落した頃、君が初めて俺の部屋に来たときのことは忘れられないね。俺の脱・童貞の時だったし。
俺の部屋に二人でいて、なんとなくそんな雰囲気になって・・・君が俺にすり寄る度に俺がビビって離れて・・・
後から聞いたけど、女性のほうから雰囲気を作るのって恥ずかしいんだよね?でもさ、俺、そういうのはToHeartでしか経験してないからさ・・・ToHeartの主人公の浩之はやる時はやる奴だったけど、実際そんなにうまくできねーっての。
なんつーか、その、まぁ、アレだよ、ホンモノの女の子が怖かったんだよ。どこをどうすればいいのか?ブラジャーの外し方もわかんないしさ。キスだって何度もした訳じゃないし、おっぱいの揉み方も知らないしさ、強く揉んだら痛いんじゃないかとかさ、もう頭ん中ゴチャゴチャでわけわかんなくなっちゃったんだよね。
でも君はそんな情けない俺をリードしてくれたっけ。丁度そのとき、CDからモー娘。の「ザ☆ピース」が流れてて、サビの歌詞に合わせて「好きな人が優しくてよかった」って言ってくれたよね。その言葉のおかげで落ち着いて、その・・・最後までできたんだっけ。
飲み会の盛り上げソングが思い出の曲になったおかげで、カラオケで踊らされる度に赤面してたよ、俺。




俺がヲタクだって事を打ち明けたのは、ちょうど鬼門の3ヶ月のときだったね。些細なことでケンカして、仲直りして、本音トークに入ったときだっけ?
「俺、ときメモとかそんなゲーム好きでさ、女の子は清楚可憐なモノだって思ってたから・・・。」こんなセリフよく言ったもんだね俺も。でも君は「そんな事は関係ないよ、そんな事でしんちゃんを嫌いになったりしないよ」って言ってくれたっけ。
そのときに一番の恥部をさらしちゃったおかげで、俺たちは「普通の」カップルになれたんだよね。
夜の公園でさ、お姫様だっことかしちゃったくらいにしてさ、でも、そんなに調子に乗るくらい嬉しかったんだよ。ヲタクだってことを受け入れてくれた君が愛しくて、誇らしくて。



2・バカップル に続く。

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